硬化剤
エポキシ樹脂プレポリマーは低分子化合物であるため、プラスチック材料としての性能はない。
よって、硬化剤を配合し、反応・架橋することにより高分子量化し、プラスチック材料となる。
この反応後の硬化物の諸性質には架橋密度が大きく関与するため、硬化剤の選択・添加は重要であり、必須である。
1. アミン系硬化剤
エポキシ樹脂の硬化剤として最も多く使用されており、反応は迅速である。
反応速度は脂肪族アミン>脂環族アミン>芳香族アミンの順に速く、見かけ上は配合量が多いほど速くなる。
しかし、ガラス転移温度や熱変形温度は当モル配合のときに最高となり、架橋密度や電気抵抗も最大となる。
2. ポリアミド系硬化剤
国内ではポリアミドアミンの別名も使用されている化合物で、分子中に複数の活性なアミノ基を持ち、同様にアミド基を一個以上持つ。
ポリエチレンポリアミンから合成されるポリアミドは二次的な加熱によりイミダゾリン環を生じ、エポキシ樹脂との相溶性や機械的性質が向上する。
ポリアミドに少量のエポキシ樹脂をあらかじめ反応させたアダクトはエポキシ樹脂との相溶性に優れ、硬化乾燥性や耐水・耐薬品性が向上する。
3. 酸無水物系硬化剤
低粘度な液状の酸無水物が取り扱いの容易さから主流となっている。
アミン類に比べ配合量が多く、配合物の粘度が低いため、作業性の向上やフィラー添加による低コスト化・硬化物のクラック防止に有効である。
また、エポキシ樹脂との反応はアミン類に比べて遅いため、三級アミン等の促進剤を添加することが多く、100℃以上の高温長時間の効果条件を必要とする。
- 脂肪族酸無水物
- 脂環式酸無水物 : 最も多く使用されている。
- 芳香族酸無水物
- ハロゲン系酸無水物
酸無水物系硬化剤は吸湿性があり、吸湿すると遊離酸を生じて硬化不良を起こす。
また、皮膚刺激性は低いが粘膜刺激性が強いといった特徴を持ち、危険物に該当するものが多いため、取り扱いには注意を要する。
4. 潜在性硬化剤
エポキシ樹脂と硬化剤の混合系において、定温での貯蔵安定性に優れ、所定の条件下にて速やかに硬化する硬化剤系。
- エポキシ樹脂の硬化剤たり得る酸性または塩基性化合物を中正塩または錯体として加熱時に活性化。
- マイクロカプセル中に硬化剤を封入し、圧力により破壊。
- 空孔を持つ粒子に硬化剤を吸着させ、水等により脱着。
- 結晶性で高融点かつ室温でエポキシ樹脂と相溶性のない物質を分散させ、加熱により溶解。
潜在性硬化剤の設計は上記のような手法に大別されるが、市販されているものは以下のタイプに分類できる。
- 高融点活性水素化合物
ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジドなどをエポキシ基と付加反応させる。
- 第三アミン・イミダゾール塩など
高融点分散型と可溶型があり、加熱により溶解または分解・活性化してアニオン機構によりエポキシ基を自己重合させる。また、促進剤としても重要である。
- ルイス酸・ブレンステッド酸の塩
可溶型で、加熱により活性化してカチオン機構によりエポキシ樹脂を重合させる。